研究業績

The number of research papars published every year
5 in 2014 / 56 in 2015 / 82 in 2016 / - in 2017 / - in 2018
143 in Total

2014

総括班

キックオフシンポジウムを九州大学病院キャンパスにて2014年10月3日に開催し,全国から集まった約60名の参加者に対して当研究領域の概要説明と公募要領の説明,および各計画研究の説明を行った.同時に総括班会議を開催し,今後の活動方針について議論した.全体班会議を2015年6 月に福岡市で開催すること,また次年度における主な活動として複数の学会の年会で共催ワークショップの開催すること,国際シンポジウムを開催して新しい動的構造測定法に関して海外からの招待講演を行うことを決めた.ホームページの開設とニュースレター1号の発行を行った.技術講習会として第3回バイオAFM夏の学校を8月19日~25日に金沢大学で安藤が開催した.実際に装置を使った実習中心を特色とする.20名(うち女性5名)が全国から参加した.本領域関係者が4人含まれている.アウトリーチ活動として複数の計画班員が細胞工学誌や実験医学誌に一般向けの日本語解説を執筆した

解説記事

1.
動的生命科学を拓く新発想測定技術ータンパク質が動作する姿を活写するー
総括班
ニュースレター 1, 1-10 (2014).
2.
特集バイオNMR Overview
神田大輔
細胞工学 33, 810-814 (2014).
3.
生細胞内での生命現象を観測するin-cell NMR技術の開発と応用
西田紀貴,嶋田一夫
細胞工学 33, 825-829 (2014).
4.
ダイヤモンド窒素-空孔中心の光検出磁気共鳴法
五十嵐龍治,白川昌宏
細胞工学 33, 850-855 (2014).
5.
不均一系NMRの黎明期を振り返る
甲斐荘正恒
細胞工学 33, 835-836 (2014).
6.
NMR温故知新
稲垣冬彦
細胞工学 33, 861-863 (2014).
7.
新しいワインは新しい皮袋に入れよ
神田大輔
実験医学 32, 2661 (2014).
8.
機能動作中のタンパク質分子を動画撮影する高速AFM
安藤敏夫
実験医学増刊 32, 1503-1507 (2014).
9.
2つのSecモータータンパク質によるタンパク質膜透過のしくみ
塚崎智也
実験医学増刊 32, 1571-1575 (2014).

神田大輔(計画班A01)

“隙間”をタンパク質結晶格子中につくり,結晶コンタクトによる「柔動構造の変形・固定問題」を解決し,タンパク質の一部あるいはリガンドが動いている状態の「振幅の大きさ=空間スケール」を実験的に決定する手法の開発を進めている.実現のための技術要素は,①タグタンパク質との融合タンパク質の作製,②タグタンパク質と対象タンパク質を一本の長いヘリックスを用いて硬く接続,であり,さらに親和力の弱いリガンドの場合は,③占有率を保障するために共有結合を用いて,リガンドを対象タンパク質にテザリングする.隙間に位置したタンパク質の一部あるいはリガンドの動きを視覚化するために,該当部分に対応するモデルをオミットして作成した差フーリエ電子密度マップを用いる.適用する対象として,ミトコンドリアプレ配列受容体であるTom20タンパク質に結合した状態のプレ配列ペプチドの大きな運動性を定量的に解析する.タグタンパク質としてマルトース結合タンパク質(MBP)を用いる.過去に電子密度マップのノイズ低減にローパスフィルターを用いることが有効であることを示した.
 今年度は構造精密化計算のオーバーフィッティングを防止するためのFreeR手法を改良する必要があることがわかった.通常のFreeR計算では計算の検証に使うために,あらかじめ少数の構造因子を除外して構造計算に使わない.使用するデータの数が減るために電子密度の質は必然的に低下するが,動きが小さい原子ではその影響は無視できる.しかし,運動性の大きな原子では影響が無視できないことを見いだした.解決策として5%のFreeRセットを使うと20通りのFreeRセットを作ることができるので,20個の独立した構造計算を行うことができる.その結果作製できる20個の電子密度マップの平均を計算することで,FreeR計算の影響を取り除けることが分かった.

安藤敏夫(計画班A01)

タンパク質が動作する姿を活写する高速AFMの高度化技術開発、応用技術開発、実証・応用研究を進め、従来の構造生物学と一分子生物物理学の限界を克服する動的構造生物学という新規分野を開拓し、それにより我が国の生命科学の発展に貢献することが本課題の最終目標である。本課題は、①多くの班員との共同研究で進めるタンパク質分子の高速AFM撮影による機能発現機序の解明、②独自に進める高速AFMを高度化する技術開発、の2本の柱からなる。
 ①についてはH27年度から開始するため、H26年度において技術支援を行うスタッフの訓練と公開用の高速AFM装置1台を製作した。また、様々な試料系が班員から持ち込まれると予想されることから、多様な試料系に適用できる種々の基板調製法を検討した。基板調製については、確立したものを文書にまとめて班員に公開する予定である。また、いくつかのタンパク質系の高速AFM観察を独自に進めた。
 ②については、高度化技術として主に以下に挙げる2課題を設定して、その準備を開始した。(i)探針による電磁波増強効果を利用した超解像蛍光顕微鏡の開発とその実証研究、及び、(ⅱ)光ピンセットと複合させた高速AFM装置の開発とその実証研究。(i)については、探針走査型高速AFM装置に光学系とフォトンカウンティング装置を組み込むシステムを設計・製作した。また、探針を金属コートするためのスパッタ装置を導入した。H27年度に装置全体を組み上げ、試験を行う予定。(ⅱ)については、探針走査型高速AFMに近赤外レーザを導入した。また、レーザでトラップされるビーズとタンパク質分子とをつなぐ長いDNA鎖の調製法を検討した。H27年度には光ピンセットと高速AFMとの複合機で試験を行い問題点を見出し解決していく予定である。

白川昌宏(計画班A02)

本研究では、ODMR(光検出磁気共鳴)を利用した細胞・生体の超分解能イメージングとin-cell NMR法の開発により細胞内における動的構造生物学の手法の確立を、通常のin vitroにおける構造解析と共に遂行した。ODMRを利用したこのイメージングにおいて必要となる要素技術は、①測定技術、②プローブ粒子の至適化とタンパク質の標識化、③細胞へのターゲッティング、④得られた情報の処理と解釈である。
 ①については、本年度までにプローブ粒子の角度変化(回転運動)を精密に解析する手法を確立した。②のプローブの至適化には目覚ましい進歩が見られた。先ず5 nm径程度の超微粒子を表面加工することで、ODMR活性を小粒子化する事に成功した。さらに表面をHPG(超分岐化グリセロール)でコーティングすることで、粒子間の非特異的吸着による凝集体形成を回避させ、またタンパク質・脂質等への非特異的吸着を激減させることが出来た。また③についてもプローブ粒子を抗体と架橋することで細胞膜タンパク質のターゲティングに成功した。
 in-cell NMRに関しては、安定同位体による均一標識に加えて、細胞内タンパク質の大きな構造・運動性・相互作用をより効率よく正確に検出することを目指し、常磁性金属タグを利用した手法の導入を検討した。本年度は主としてin viroにおける予備実験を行い、常磁性金属タグによる長距離のNMRシグナルに与える効果を確かめた。また、細胞内タンパク質のS-S結合の還元開裂の時定数を計測することにも成功し、これにより細胞質における酸化還元電位を推定することが出来た。さらに、19Fでアミノ酸特異的に標識したタンパク質を測定し、相互作用や運動性などの部位特異的な情報が比較的短時間の測定で得られることを示した。またリジンの側鎖を13C-ジメチル修飾したタンパク質で比較的簡便に高感度測定しうることを示した。

西田紀貴(計画班A02)

本研究では、これまでに開発したバイオリアクター型in-cell NMR法をさらに高度化し、検出感度の向上および適用範囲の拡大を達成することで、実際の細胞内での生命現象のリアルタイム観測に適用することを目指した。
 本年度はバイオリアクター型in-cell NMR法の検出感度向上を目指して、安定同位体標識法の工夫により、細胞内タンパク質のNMRシグナルをより高感度で検出して1枚のスペクトルを短時間で取得する技術を確立に取り組んだ。また、培地にプロテアーゼ阻害剤を添加することにより、in-cell NMR測定中のタンパク質分解の抑制することにも成功した。さらに、細胞に対してストレスを加えながらin-cell NMR測定を行う技術の開発も行った。

杉田有治(計画班A03)

本研究課題では、膜蛋白質や生体超分子などが機能発現する姿を捉えるために、分子シミュレーションと電子顕微鏡や高速AFMなど低解像度の動的構造情報を組み合わせ、動的構造を活写することを目指す。本年度の研究では計算手法とソフトウェアの開発に重きをおき、全原子分子動力学のみならず、粗視化分子モデルを用いた分子動力学法の開発に取り組んだ。特に、よく使われるCα原子のみを用いたモデルに加えて、全原子粗視化モデルの構築を行った。これらを当研究室で開発中の分子動力学ソフトウェアGENESISに組み込み、デバッグとテストを行った。また、名大太田らによって開発されたMotion Tree法を膜蛋白質の大規模構造変化の解析に応用し、特に複数の立体構造が解かれている場合に、この手法によって構造変化の基本単位を予測しうることを示した。さらに、同様のアイデアを粗視化分子動力学に生かすことによって、複数のドメインからなる蛋白質の大規模構造変化を効率よく安定にシミュレーションできることを示した。また、全原子分子動力学シミュレーションにより塚崎らが近年決定した高解像度トランスロコンのダイナミクスを解析した。分担者のTama Florenceらは電子顕微鏡で得られた低解像度電子密度に原子モデルをフィッティングする新しいアルゴリズムの開発を行い、GENESISに導入した。

塚崎智也(計画班A03)

生体膜のイオン等の透過障壁を維持したままで,タンパク質という巨大な分子を膜透過させる為には,専用のタンパク質膜透過チャネルが必要である。Secトランスロコンは,すべての生物に保存されたタンパク質膜透過チャネルであり,ダイナミックな構造変化を繰り返しながらタンパク質の膜透過を達成していると考えられている。しかしながら,その緻密な作業過程については不明のままである。Secトランスロコンマシーナリを理解する為に最新の技術を用いた動態活写を目指している。Secトランスロコンは,それぞれが均一に作動するわけではないため1ユニットでの観測が必要不可欠である。また,Secトランスロコンが機能する為には膜構造が必要であるが,膜の流動性は1ユニット解析を妨げる,膜の流動性を最小限に抑えるためにNanodiscの技術を適応させる。
 本年度は,Secトランスロコン複合体をNanodiscへと再構成し,タンパク質の膜透過を再現させるべく条件検討を進めた。今後,金沢大学のバイオAFM先端研究センターと協力し高速AFMなどを用いた1分子解析を進める。また,本年度はSecトランスロコンとSecトランスロコン関連膜タンパク質YidCの結晶構造解析も進めた。トランスロコンの解析では休止状態の高分解能構造,膜透過中間体に相当する構造を解明した。杉田グループとの共同研究により,高分解能構造を用いた分子動力学計算を進め,柔軟なループ領域を明らかとし,その重要性を示した。Secトランスロコンと共にタンパク質の膜組込みに関わるYidCの解析から,YidCは5回の膜貫通領域が疎水的な膜内に「親水的な溝」を形成することが明らかとなり,この親水的な溝で基質と相互作用し,基質を膜内に引き込み,タンパク質の膜組込みを達成するという分子機構を提唱した。

Papers in 2014

1.
Backbone and side-chain 1H, 15N and 13C resonance assignments of the microtubule-binding domain of yeast cytoplasmic dynein in the high and low-affinity states
Takarada O, Nishida N, Kikkawa M, *Shimada I
Biomol NMR assign 8, 379-382 (2014).
PubMed: 23975349
2.
Automated resonance assignment of the 21kDa stereo-array isotope labeled thioldisulfide oxidoreductase DsbA
Schmidt E, Ikeya T, Takeda M, Löhr F, Buchner L, Ito Y, Kainosho M, *Güntert P
J Magn Reson 249C, 88-93 (2014).
PubMed: 25462951
3.
Mosaic of Water Orientation Structures at Neutral Zwitterion Lipid/Water Interface Revealed by Molecular Dynamics Simulations
Suyong Re, Wataru Nishima, Tahei Tahara, *Yuji Sugita
J. Phys Chem Lett 5, 4343-4348 (2014).
PubMed: 26273985
4.
Hybrid Electron Microscopy Normal Mode Analysis graphical interface and protocol
Carlos Oscar S. Sorzano, Jose Miguel de la Rosa-Trevin, Florence Tama, *Slavica Jonic
J Struct Biol 188, 134-141 (2014).
PubMed: 25268657
5.
Crystal structure of Escherichia coli YidC, a membrane protein chaperone and insertase
Kumazaki K, Kishimoto T, Furukawa A, Mori H, Tanaka Y, Dohmae N, Ishitani R, *Tsukazaki T, *Nureki O
Sci Rep.4, 7299 (2014).
PubMed: 25466392


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