イベント詳細

【4th Kanazawa Bio-AFM Workshop】

日時:2016年10月3日〜6日
会場:金沢大学角間キャンパス
担当者:安藤敏夫(金沢大学)
Webサイト:http://www.s.kanazawa-u.ac.jp/phys/biophys/bioAFM2016/index.htm

概要:本ワークショップは、AFMに関連する技術開発、AFMのバイオ応用研究、一分子生物物理学的研究を主題として開催した。参加者総数は91名で、海外からは11カ国の38名が参加された。招待講演は、海外から13件、国内から7件、一般講演は31件あった。AFM関連企業9社からAFM装置などの出展もおこなった。

学会報告

第4回 Kanazawa Bio-AFM Workshop 2016に参加して

川崎由貴(九州大学システム生命科学府一貫制博士課程3年)

2016年10月3日から6日まで、石川県金沢市のKKRホテルを会場として”4th Kanazawa Bio-AFM Workshop”が開催された。この国際ワークショップは金沢大学の安藤敏夫教授が主催し、今回で4回目の開催となる。走査型プローブ顕微鏡をはじめとする一分子観察技術の進歩、それらを用いた最先端の生命科学研究について活発な議論が交わされた。議論は盛り上がり、特に3日目は終了予定時間を大幅に超えてしまうほどであった。

ワークショップの講演は10のセッションから構成されており、2日目から4日目まで3日間にわたり51の講演と質疑応答が行われた。セッション1ではAFMによるタンパク質複合体や細胞表面タンパク質のイメージングについての講演が行われた。核孔複合体や生きているバクテリアの細胞表面タンパク質の高速AFM観察、Force curveの測定による細胞表面タンパク質マッピングなど興味深い内容が多かった。特に印象に残ったのはLim先生(Basel大学、スイス)の講演で、核膜孔における選択的輸送のしくみを明らかにするために、Nativeな状態の核膜複合体を高速AFMで観察し、FG-Nupsの構造が短時間に大きく変化する様子をとらえることに成功したというものだった。

セッション2ではAFMによるDNAやDNA結合タンパク質の構造のイメージングについての講演が行われた。杉山先生(京都大学)が高速AFMでとらえたのは、正確に配置したDNA折り紙上のタンパク質分子や膜上でDNA折り紙が格子状につながっていく様子で、とてもインパクトがあった。

セッション3では、AFMと他の技術の組み合わせによる生体分子の観察とAFMカンチレバーについての講演が行われた。SMLM (Single Nolecule Localization Microscopy)やSERS (Surface Enhanced Raman Spectroscopy), FTIR (Fourier Transform InfraRed)といった技術とAFMを組み合わせることにより、より詳細に生体分子の観察を行うことが可能になる。Kasas先生(EPFL, スイス)のAFM のカンチレバー上でバクテリアや細胞を培養してそのナノスケールの動きを検出する技術や、Kim先生(産総研)のカンチレバーの先につけたキャップを用いて細胞同士の相互作用を測る技術も興味深かった。

セッション4では、AFMによるモータータンパク質のイメージングについての講演が行われた。ミオシンやダイニン、キネシンといったモータータンパク質が細胞骨格上を歩く姿を直接イメージングすることで、その動きについて定説を覆すような新しいメカニズムが提唱されていた。Bryant先生(スタンフォード大学、アメリカ)の講演では、”What I cannot create, I do not understand”という言葉がとても印象的で、核酸やモータータンパク質を組み合わせて動きを制御できる生体分子モーターを設計し、AFMで観察を行ったという内容だった。

セッション5では走査型イオンコンダクタンス顕微鏡についての講演が行われた。イオンコンダクタンス顕微鏡を用いて細胞表面の形状をイメージングすると同時にATPやmRNAなどの細胞内での分布を見ることができる装置の開発が進められている。岩田先生(静岡大学)のイオンコンダクタンス顕微鏡で細胞の表面形状をとらえながらターゲット細胞に細かい操作を加える技術や、渡辺先生(金沢大学)の高速イオンコンダクタンス顕微鏡の技術には驚かされた。

セッション6ではAFMによる細胞膜や膜タンパク質のイメージングについての講演が行われた。膜タンパク質はX結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡を用いた構造研究が進められているが、これらの技術では動的な構造変化と機能の関連をとらえることはできない。基板上の脂質二重膜に再構成し、高速AFMを用いて観察することで、膜タンパク質の動きを一分子レベルで解析することが可能となった。高速AFMを用いることでScheuring先生(INSERM、フランス)はグルタミン酸受容体のエレベータードメインの上下運動を、角野先生(福井大学)はカリウムチャネルへのtoxinの結合状態をとらえることに成功した。

セッション7ではForce spectroscopyについての講演が行われた。セッションのはじめにRevenko先生(Asylum Research、アメリカ)が、AFM の検出モードについてそれぞれの特徴などを詳しく講演された。研究対象とする生体分子や生物現象に応じて適切なモードを選択することが重要ということだった。リガンドと受容体の相互作用の測定や細胞上のバイオマーカーの検出など、Force spectroscopyの技術は様々なところに応用が可能である。

セッション9ではFM-AFM (Frequency Modulation Atomic Force Microscopy)についての講演が行われた。福間先生(金沢大学)は液中で約1 秒/フレームの原子分解能のイメージングが可能となったHigh-speed FM-AFMについて講演された。この技術を用いて、液中でのカルサイトの分解プロセスにおいて中間状態をとらえることに初めて成功された。

セッション8と10では高速AFMについての講演が行われた。高速AFMは生体分子の動きを高時空分解能で直接観察することができる革新的な技術である。高速AFMを用いることで、タンパク質分子が協同的に機能するしくみやバクテリアの細胞分裂のしくみ、繊維形成のしくみなどこれまで用いてきた手法だけでは理解できなかった生体内で起こる現象のメカニズムが次々と明らかにされている。また、時間分解能をさらに向上させるためのイメージング技術の開発や壊れやすい試料でも観察できるようなフィードバック調節の機構の開発などが進められており、装置の技術の進歩はこれからも続きそうだ。セッションの最後に発表されたのは主催者の安藤先生(金沢大学)で、X線結晶構造解析や電子顕微鏡、NMRで解析することが難しい天然変性タンパク質IDRの構造を高速AFMでイメージングすることに成功したという興味深い内容だった。

このシンポジウムに参加して、AFMがナノレベルでの分子の観察や相互作用解析から細胞レベルの観察に至るまで、生物現象のしくみを深く理解するために幅広く応用可能なのを学ぶことができた。AFMの技術が急速に進歩していることも強く感じられた。最新のAFM技術を積極的に取り入れていくことは、生命科学研究のさらなる発展につながることが期待される。

続きを読む

閉じる

ページの先頭へ