新発想測定技術

測定技術・依頼測定の公開範囲

原則として、研究期間前期(H26-H28)は共同研究や依頼測定を計画班および公募班内で優先します。
研究期間後期(H29-H30)には共同研究と依頼測定を広く公開します。

測定技術のアクセス方法

1.担当研究者に直接連絡する。連絡先は以下に記載しています。
2.総括班の専用窓口に相談する。技術的な問題や適用可能性などの質問、
あるいは担当研究者に連絡する段階に至っていない場合など、気軽に相談したい場合にお勧めです。
総括班相談窓口 E-mail:

タンパク質分子の動きを観るために結晶中に創り出した隙間を利用する新発想結晶解析

神田 大輔(九州大学)

X線結晶解析やNMR分光法を使ってタンパク質の立体構造解析を行うことで、構造のみならず動的な性質についての情報も得られる。しかし、通常は分子の動きが平衡状態付近の小さな振幅の動きであることが仮定されている。これに対し、大きな振幅を持つ場合には、結晶解析では電子密度が消失、あるいは分子間接触のために1つの状態に固定されてしまう。また、溶液NMR測定ではNOE情報が距離に対し非線形性をもつために、平均構造に物理的意味がなくなってしまう。

これらの「大振幅運動のサンプリング問題」を実験的に解決するために、注目する対象の周囲に結晶コンタクトフリーな“隙間”を意図的に作り出すという新発想のタンパク質結晶作成を行う(→)。特別にデザインしたタンパク質の結晶を作製し、結晶コンタクトフリー空間(Crystal Contact-Free Space、 CCFS、オレンジ色)を意図的に創り出して、調べたい部分(マゼンタ色)を配置して結晶解析を行い、運動している部分の電子密度を得る。電子密度の重ね合わせは線形なので運動性を反映した正しい空間分布が得られる。

結晶コンタクトフリー空間を実現するために、融合タンパク質を用いる。タグタンパク質と目的タンパク質の間を硬く接続して、タグタンパク質と目的タンパク質の間に安定的に空間を確保することが基本的な戦略である(→)。硬い接続の一番簡単な例は、タグタンパク質の末端ヘリックスと目的タンパク質の末端ヘリックスを一本の長いヘリックス(青色)として接続することである。適当なスペーサー配列を挿入することで、タグタンパク質と目的タンパク質の間の相対的な距離と角度を調節できる。

タグタンパク質および目的タンパク質の中でフレームになっている部分の座標を用いて分子置換を行う。目的部分の座標を置かないで差電子密度マップを作ることで、目的部分を電子密度としてモデルバイアスを無く可視化することができる。運動性の高い部分の可視化には通常のX線結晶解析とは異なる測定あるいは計算上の工夫が必要となる。ローパスフィルターの適用、FreeR計算の影響を無くす計算上の工夫、長波長X線を用いた回折測定、多数の結晶から作製した電子密度マップの積算などがある。差電子密度オミットマップの信号/ノイズ比が悪いときは、動きの重なり部分が見えるだけであるが、信号/ノイズ比が良くなれば、動きの全体像(空間分布あるいは振幅の大きさ)が見える。

アクセス方法

直接の問い合わせの場合: 神田 大輔
九州大学生体防御医学研究所構造生物学分野・主幹教授
Mail :
TEL : 092-642-6968

支援内容

タンパク質のデザイン、結晶化スクリーニング、X線回折測定と解析計算、電子密度の解釈を支援します。
なお、発現プラスミドの作製やタンパク質発現と調製は各自で行っていただきます。

高速AFMの高度化技術の開発

安藤 敏夫(金沢大学)

従来の構造生物学手法では得られる情報が静止構造に限られる。一方、従来の1分子挙動解析手法ではタンパク質に付けた光学プローブを介して測定するため、タンパク質分子そのものは見えない。従って、構造と動的挙動を同時に調べることができない。この限界を破るために新発想の顕微鏡「高速AFM」が開発され、動的に変化する個々の生体分子をサブ100msの時間分解能、サブ分子分解能で直視することが初めて可能になった。実際、いくつかのタンパク質系で動的な構造・プロセスが観察され、従来手法では不可能であった発見が可能であることが実証された。しかし、高速AFMは多くのタンパク質系に未だ利用されておらず、個々のタンパク質系への応用技術が未整備である。また、高速AFM装置の機能も未だ十分ではない。

高速AFMの応用技術開発:高速AFM観察では、試料及びそれを載せる基板に工夫を要する。基板とタンパク質の吸着が弱いと、分子は基板上で速くブラウン運動して観察できない。一方、強く吸着すると、タンパク質の機能が損なわれる。2種のタンパク質の間で結合・解離を伴って機能する系では、選択的吸着・固定が必要になる。AFMでは探針側からしか観察できないため、タンパク質の特徴的な構造を見るには、分子を特定の方向に配向させて基板に吸着・固定することも必要になる。温度を上げないと活性を示さない好熱菌由来のタンパク質系では温度を50度程度まで上げる必要が出てくることもあるが、対流や溶液の蒸発といった問題を解決しなければならない。観察を乱さずに、試料溶液をインジェクトするといったことも必要になる。

高速AFMの高度化技術開発:ケージドリガンドを光閃光でアンケージングする手法を取り入れ、リガンド結合に伴うタンパク質の構造変化を観察する手法を開発する。高速AFMでは低分子リガンドを可視化できない。そこで、金属探針による電磁波増強効果を利用した超解像蛍光顕微鏡を開発し、高速AFMに導入する。また、外力作用下にあるタンパク質分子の挙動を観察するために、光ピンセットと高速AFMを組み合わせる技術開発を行う。

アクセス方法

第一選択:毎年8月に金沢大学で開催する夏の学校に
参加して下さい
第二選択:直接連絡 安藤 敏夫
金沢大学理工研究域数物科学系・教授
Mail:
TEL: 076-264-5663

支援内容

高速AFM装置については公募班員と一般向けの専用装置を金沢大学に設置します。専属のテクニカルスタッフが装置操作などのトレーニングを行います。相談に乗りますが、トレーニングが済んだあとは、アッセイ系の検討、高速AFM観察、解析は各自で行って頂きます。

ODMRとin-cell NMRによる細胞内蛋白質間相互作用・動態の解析法の開発

白川 昌宏(京都大学)

細胞内は、細胞骨格や細胞小器官により微小空間に分断されており、さらに細胞質はタンパク質等の高分子濃度が40%にも達しうる過密状態である。そのため細胞内のタンパク質やそれらの集合体である細胞小器官は大きなMacromolecular Crowding効果やMicro-compartmentalization効果を受けている。したがってこれらの機能メカニズムの解明には、生きた細胞内でのタンパク質・小器官の挙動や運動性を知る必要がある。

本研究では、細胞内タンパク質・小器官の立体構造・運動性・超分子複合体形成等を生きた細胞の中で計測する手法を開発する。一つは、細胞内の特定のタンパク質の高次元NMR測定であるin-cell NMR法であり、もう一つはダイアモンドナノ粒子を使った光検出磁気共鳴法(ODMR)である。

in-cell NMRでは、タンパク質の原子レベルの構造情報や運動性・他分子との相互作用を詳細に観察することができる。

ODMRは、蛍光検出と磁気共鳴技術を組み合わせることにより、ダイアモンドナノ粒子の姿勢を原理的には、±3°以内で完全決定できる。そこで、ダイアモンドナノ粒子を蛍光タグとして用いれば、細胞内におけるタンパク質・細胞小器官の一分子動態計測に応用が可能である。本研究では、測定・タンパク質の標識化・細胞内ターゲッティング等の手法を導入することで、細胞内の分子挙動や運動性、細胞内での分子スイッチの作動を一分子リアルタイム計測する手法の開発を目的とする。

アクセス方法

直接の問い合わせの場合:白川 昌宏
京都大学大学院工学研究科分子工学専攻
生体分子機能化学講座・教授
Mail:
TEL: 075-383-2535

支援内容

タンパク質のデザイン、結晶化スクリーニング、X線回折測定と解析計算を支援します。また、各種NMR測定と試験的なODMR観察に関して支援します。なお、発現プラスミドの作製やタンパク質発現と調製は各自で行っていただきます。

生細胞内の生命反応をリアルタイムで捉えるin-cell NMR法の開発と応用

西田 紀貴(東京大学)

in-cell NMR法は細胞内に導入または発現させた安定同位体標識タンパク質のNMRシグナルを観測することで、実際の細胞内環境にあるタンパク質の立体構造情報を得ることのできるNMR手法である。従来のin-cell NMR法では、細胞を高密度に充填してNMR測定を行うため、測定中に培地成分が枯渇して細胞内環境の劣化や細胞死が起きるという問題があった。
この問題を解決するため、我々はNMRサンプル管内の細胞に培地を灌流するゲル包埋型バイオリアクター装置の開発を行った。この手法では、細胞を温度可塑性のゲル内にコイル状に包埋し、培地をNMRサンプル管の底部から一定速度で供給する。これにより、細胞を生理的条件下に保って長時間のin-cell NMR測定を行うことができるようになった(Angew Chem Int Ed (2013) 52, 1208-11) 。

バイオリアクター型in-cell NMR法を用いることにより、以下のようなNMR測定が可能になる。
(1)長時間の測定を要するNMR測定法の適用

これまでに、われわれは細胞内におけるタンパク質間相互作用を解析する手法の一つである転移交差飽和法をin-cell NMR実験に適用し、外部から導入したタンパク質と内在性分子との相互作用を観測することに成功している。その他にも、バイオリアクターを用いることで、構造決定のための3次元NMR(三重共鳴法やNOESYスペクトル)、緩和分散法などの運動性解析、低濃度のタンパク質のNMRスペクトル取得など、長時間のNMR測定を要する手法を適用できると考えられる。
(2)細胞内生命現象のリアルタイム観測

細胞内に導入した安定同位体標識タンパク質に生じる経時変化(酵素反応や翻訳後修飾など)を観測する。高感度のプローブ(メチル基側鎖や19F)を用いて短時間のスペクトルを連続的に取得することにより、細胞内におけるタンパク質構造の経時的な変化を捉えることが期待できる。

アクセス方法

直接の問い合わせの場合:西田 紀貴
東京大学大学院薬学系研究科・助教
Mail :
TEL : 03-5841-4814

支援内容

安定同位体標識タンパク質の調製、細胞内へのタンパク質導入法、バイオリアクターを用いたin-cell NMR測定

マルチレゾリューション計算手法を用いたタンパク質複合体の高解像度動的解析

杉田 有治(理化学研究所)

タンパク質の立体構造解析は、これまでX線結晶解析やNMR分光法を使って行われてきた。この解析で結晶構造中や溶液中でのタンパク質の平均構造と揺らぎという描像を高解像度で得ることは可能であるが、本新学術領域で解決すべき「大振幅運動」に関して得られる情報は少なかった。一方で、溶液中での動的構造を解析するために開発されてきたイメージング等は大振幅運動の存在を明らかにするためには有用であるが、高解像度の動的構造情報を得ることは難しい。我々は、計算科学、特に、様々な解像度の分子モデルを用いた分子動力学計算法を用いることで、タンパク質やその複合体の動的構造をできるだけ高解像度に得ることを目指した開発を行う。

タンパク質などの生体分子を記述する分子モデルとしては、粗視化モデル、全原子モデル、QM/MMハイブリッドモデルなどが挙げられるが、「大振幅運動」のモデリングに適したモデルは最初の2つである。特に、粗視化モデルを有効に用いることでミリ秒よりも遅い時間スケールの大規模構造変化をシミュレーションすることも原理的に可能である。しかし、粗視化モデルにおけるパラメータ依存性を考慮すると、その計算結果を実験データと比較していくことや実験データをあらかじめ繰り込んだシミュレーションを実施することが重要になってくる。
さらに、粗視化モデルと全原子モデルの長所を組み合わせたマルチレゾリューションモデルを用いたシミュレーションを実施することで、構造変化と機能の関係や分子機構についてできるだけ詳しい情報を得ることが可能になりつつある。我々は上記の機能を持つ分子動力学ソフトウェアを開発中であり、フリーウェアとして広く公開していく。シミュレーションと組み合わせる実験としては、現在、電子顕微鏡、核磁気共鳴(NMR)、X線散乱、SSクロスリンク実験等を予定している。

アクセス方法

直接の問い合わせの場合:杉田 有治
理化学研究所杉田理論分子科学研究室・主任研究員、
同計算科学研究機構粒子系生物物理研究チーム・
チームリーダー
Mail :
TEL : 048-462-1407

支援内容

構造解析法等で得られた低解像度の構造情報と計算科学を組み合わせたモデリング等を一緒に行いたいと思います。X線結晶構造やNMRによる溶液構造を用いたシミュレーションを行う支援等も可能ですが、こちらのマンパワーの許す範囲でお願いします。

ナノディスクを用いた膜タンパク質の機能解明のための手法開発

塚崎 智也(奈良先端科学技術大学院大学)

近年、注目されている技術として図に示したような膜タンパク質と脂質とをディスク状に再構成できるナノディスクとよばれるものがあります(図)。膜タンパク質を精製して in vitro で解析を行うためには、界面活性剤で可溶化するのが一般的でありますが、その状態では界面活性剤が測定の妨げになることがあります。膜タンパク質を膜へ再構成して測定する方法として、リポソームや平面膜への再構成法がありますが、どちらも膜タンパク質の動態観測を行うことを考えると、膜の流動性が問題となってきます。ナノディスクに再構成された膜タンパク質は、界面活性剤フリーな状態かつ膜の流動性を抑えた条件での測定を可能とします。本研究ではこのナノディスクを用いた膜タンパク質の新たな動態解析を進めます。

これまで、私たちはSecタンパク質によるタンパク質の膜透過機構(図)を明らかとすべくX線結晶構造解析を進めてきました。結晶構造解析による詳細な立体構造は、タンパク質の膜透過機構を明らかとするために重要な情報ではありますが、時間依存的な構造変化は追跡する事ができません。Secタンパク質の動態観察には、ナノディスクを利用した1ユニット動態間観察が適していると考えおり、高速AFMによる観察や蛍光一分子計測をとおして動画として可視化する計画です。
ナノディスクを用いることで膜の両側に十分なスペースを確保し、タンパク質膜透過反応が再現できると期待しています。この動態観察には、高純度での膜タンパク質の調製、活性を保った状態での膜タンパク質のナノディスクの再構成などのサンプルの調製方法の確立だけでなく、膜を隔てた領域を区別する必要があるなど乗り越えなくてはいけない問題がいくつも存在します。膜タンパク質のX線結晶構造解析で培った経験と技術で、それらの問題を解決し、Secタンパク質をモデルとしてナノディスクを用いた新しい測定系を構築します。続いて、本手法を他の膜タンパク質の解析にも適応させることを計画しています。

アクセス方法

直接の問い合わせの場合:塚崎 智也
奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科・准教授(PI)
Mail :
TEL : 0743-72-5551

支援内容

膜タンパク質の調整、ナノディスクの調製、LCP(Lipidic cubic phase)を用いた膜タンパク質の結晶構造解析

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